こんにちは。
シンガポールの出張ピアノ教室
fairy wish creation 講師の
塚越 則子(つかごし のりこ)です。
1992年来星。シンガポールPR(永住権)保有者。
シンガポールで1番長い指導歴を持つ、日本人のピアノの先生です。
シンガポールは日本とピアノ教室の事情が異なり、法律により、講師の自宅でお教室を開講することは認められていません。
当ピアノ教室は、シンガポール政府の定めた法律を遵守した、講師が生徒さんのお宅に出向いてレッスンを行う、出張ピアノ教室です。
Q&Aシリーズ⑩
講師 塚越 則子(つかごし のりこ)は、ヤマハ認定グレードにおいて、ピアノ、エレクトーンの演奏、指導共に最高位のグレードを保持する指導者であり、鍵盤楽器演奏のエキスパートです。
今日は、当ピアノ教室でピアノを習い始めて3ヶ月目の、大人ピアノの生徒さんのレッスンの様子をお伝えします。
40代男性。子どもの時のレッスン経験を元に、趣味でピアノを独学で学んでおられた〈ピアノの世界へお帰りなさいチーム〉。お嬢さん2人も、当ピアノ教室の生徒さんです。
レッスンを始められたきっかけは、ある日、お嬢さんのレッスンの後に、少しだけ演奏を聴かせていただき、ワンポイントアドバイスをさせていただいたことです。
体験レッスンで最初にお宅に伺った日、ピアノの上に置いてあった楽譜に私が目を留めて質問をして、お父さんも趣味でピアノを弾いていらっしゃることは聞いていましたが
ある日レッスンに伺うと、さっきまで弾いていたのが明らかにわかるように楽譜立ての一番手前に、たくさんの「おたまじゃくし」が黒々と並ぶ楽譜が載せてあり、それを見た途端、私は、音を聴きたくてたまらなくなってしまって、つい、無茶振りをしてしまったのです・・・(汗)
最大の理由は、なんと言っても、ピアノ仲間として、演奏を是非聞かせていただきたいという思いですが
一方で、ピアノ指導者として、私の頭の中には、楽譜を見た瞬間、今までの経験からくる、ある種の「カン」が働いていました。
きっと一人では解決できない疑問があるに違いない
めくりたてホヤホヤのように広げられていたのは、ショパンのバラード第1番 ト短調 Op.23の、一番最初のクライマックスのアルペジオのページでした。
ショパンのバラードは全部で4曲あり、1番は、その中でも日本人に一番人気があります。
作品の特徴:
・詩人ミツキェヴィッチの詩からインスピレーションを受ける
・物語風に展開される、劇的でスケールの大きな作品群
・但し、演奏の際には、純音楽的アプローチが必要
・6/4拍子、または6/8拍子の3拍子系のリズム
・ショパン独特の詩的な感性とピアニスティックな華やかさも魅力
「バラード」は、「物語」を意味するフランス語が起源となっているようで、一般には、物語詩、 譚詩(たんし)を指すもののようですが、ロマン派時代以降は、音楽の中にも積極的に文学が 取り入れられる傾向が顕著になり、「物語的、文学的な雰囲気の音楽的作品」という 意味合いを持つようになったようです。「ショピニストへの道」より引用。
ショパンのバラードは基本的に3拍子系で、第1番が6/4拍子、第2番~第4番は全て6/8拍子で書かれています。 4曲ともに 極めてドラマティックで作品の規模は大きく、高度な演奏技術が求められる難曲で、演奏効果もきわめて高いです。
これらは、ショパンの創作の一つの頂点といってよく、ショパンを弾くからにはこの4曲は絶対にものにしたいと憧れる人が多いです。特にこの1番は、華やかで若々しい躍動感にあふれた曲調が特徴で
- 戦場のピアニスト 物語後半、主人公がドイツ軍将校にピアノを弾くように命じられた際に演奏した曲として使用されていたり
- フィギアスケート 浅田真央選手が2010-2011シーズンのエキシビションにて用いたほか、羽生結弦選手も2014-2015、2015-2016シーズン、2017-2018シーズン、2019-2020シーズン途中(四大陸フィギュアスケート選手権)からショートプログラムにて用いられたり
と、いろいろな場面で使用されているので、耳にしたことがある方も多くおられることでしょう。
ショパンのバラードを練習しているのであれば、完成度を高めていきたいと思った時、独学ではわかりにくい部分も出てくるだろうとの私の予想は的中したようで、早速ご質問があった、ペダルの踏み換えのタイミングについて簡単な演奏アドバイスをすると、ひとまず、最大の疑問は氷解したようでした。よかった!
その様子に安堵して、「頑張ってください!またいつか練習の成果を聞かせてくださいね!」と玄関を後にして次のレッスンに向かったのですが
翌日、来月からレッスンをお願いしたいというお申し出を受け、現在に至ります。
大人の独学ピアノで陥りやすい問題点とは。
大人のピアノ愛好者の特徴として、素直にピアノを・音楽を楽しみたくてピアノを弾き始めたのに、真剣であればあるほど、練習に孤軍奮闘しているうちに、技術の習得や速く弾く事・ミスなく弾く事などに目的がすりかわりやすいことが挙げられます。
この生徒さんは
♦︎YouTubeでペダルの踏み方を研究しようとしても理解できず、自己流で踏んでも音が濁ってしまう(演奏動画は手元しか写していませんね。。。涙)
♦︎YouTubeで何人かの演奏を聴き比べて、目指したい雰囲気は決まってきたものの、具体的にどうしたらいいのかが分からない
♦︎指づかいがこれで合っているのか、音が切れてしまうのを直すにはどうしたらいいのか分からない
と、演奏技術が向上するにつれ、様々な疑問が生じ、解決法が見つけられずに、一人でお悩みのループにハマっておられたようです。。。切ないですね。
レッスンでは
どこがおかしいのか?どこをどうしたらいい音になるのか?目指す曲想に近づけていくためには、具体的にどんなことをしたらいいのか?
まずそんな事を、一つ一つ一緒に探っていくことからスタートしました。
この生徒さんは、普段から音楽をよく聴いておられて、音の質感の違いを敏感に聞き分ける感性をお持ちなので、演奏法のアドバイスをした後、実際に試して、すぐに、その違いを実感していただくことができました。
違いを感じて理解ができれば、良い方へ持っていくのは早いんですよね♬
テクニックは、ほんの少しの何かに注目するだけで(視点を変えるだけで)弾きやすくなるものが多いと思います。普段の練習では、自分では気づかない事が多くても、指導者は、それらを客観的に見ることができます。
すぐに問題の原因をピンポイントで指摘して、改善への道筋を具体的に説明することができるので、あとは直していくだけ。超シンプルにお悩み解決です!
現在、この生徒さんは、ピアノ演奏に必要な身体の使い方をマスターするために練習に励んでおられます。身体の使い方をマスターすると、テクニックの上達も格段に早くなりますよ。
「私が40ウン年生きてきた中で、初めての経験ばかりで、脳ミソがシャワシャワしています、でもとっても楽しいです!」
そうおっしゃる生徒さんは、いつもレッスンの後、スッキリ爽快な笑顔です。嬉しいですね。
そう、大人ピアノには、心の持ち方も重要。誰だって、幾つになったって上昇していけるのですよ♬
シンガポールのピアノ教室/大人ピアノで振り返る「あの時代」。
大人レッスンの生徒さんに見る、ピアノレッスンを「愉しむ」チカラ。
ピアノの国へおかえりなさい〜大人ピアノKさんとのシンガポールのピアノレッスンの思い出〜
わたしの考える、大人ピアノの本来の目的とは。
芸事を習得する、上達するというのは、簡単な事ではありません。たくさんの「時間」と「労力」が必要です。でも、私は大人のピアノレッスンに「必死に努力する」事だけに焦点をあてて欲しくはないと思っています。
基本はきっちりおさえる必要がありますが、「身体や心に無理を強いずに心地よくピアノ演奏を楽しむ方法」がある、ということを、知って頂きたいのです。
技術は目的ではなく表現の手段です。
先日のレッスンで帰り際に、こんなご質問を受けました。
「先生は、落ち込んだりすることってないんですか?」
答えはイエスでもあり、ノーでもあります。
もちろん、たまには落ち込むこともありますが、引きずらないように、その思いに溺れないように、自分自身を律するのが習慣になっています。
【シンガポール歴29年】ピアノの先生が実践している、最強のメンタルマネージメントマネージメント。
音楽を生業にして生きていることのプライドが、常に心の根底にあるからです。
私にとって音楽とは、「友達」でも「大好きなもの」でもなく、わたしを構成する一部です。
ピアノを続けていくことに自信を失いかけたこともありましたが、それはもう過去のこと。今は未来への不変の夢があるので、気持ちが揺らぐことはありません。
【ママからのご質問】②/ピアノをやめたいと思ったことありますか?
私たちが「ピアノを弾ける」ということは、とっても「幸せな事」です。そうあるべきです。ピアノを弾ける環境にあること、一つ一つ身に付けていけること。大人のピアノ愛好者の方々には、これらに感謝の気持ちと喜びを忘れないで欲しいと願っています。
そう思うだけで、きっともう、あなたの奏でる音色は変わるでしょう。
好奇心を持って楽譜を見つめ、感じたり考えたりしたことを素直に表現して楽しむ気持ちを大切に。
五感を使って音楽を愉しむ。
その先に待っている、一人一人の心の中のブレイクスルー。
それを体感することこそ、大人のピアノレッスンの目的だと私は感じています。
日常の忙しさを優先して、後回しにしている非日常の世界の中に、自分の人生を変える種が潜んでいるかもしれない。
そういう期待や予感を持ってますか??
ちなみに、そういう種というのは、当事者意識が薄く、人が何かをしてくれるのを待つだけの受け身の生き方では見つけだすことはできず
気づける人というのは、自ら種をつかみにいく人というのがお決まりだと、私は常々感じています。
この生徒さんは、まさに今、その種を自らの手でガッチリと掴んだばかり。突破口を目指して前進する日々は続きます。