こんにちは。
シンガポールの出張ピアノ教室
fairy wish creation 講師の
塚越 則子(つかごし のりこ)です。
今日は、みなさんよくご存知の「エリーゼのために」についてのお話です。
昨日、ある生徒さんのお母さんとメッセージのやり取りをしているとき「エリーゼのために」の話題になりました。
この生徒さんは小学3年生。そろそろ「エリーゼのために」が”射程距離”に入ってくる時期です。少し前までは興味を示すことがなかったのに、最近になって《変化》が見られたのだそうです。 《成長》の証ですね!
「エリーゼのために」は、ピアノを習い始めた子どもたちが「いつか弾けるようになりたい」と目標にする曲ナンバーワンの曲として有名です。
当ピアノ教室でも、リトルピアニストたちに人気があり、発表会では毎年必ず誰かが演奏する「お馴染みの1曲」です。
ドラマティックな曲の展開に心奪われる生徒さんが、とても多いですね。
シンガポールの出張ピアノ教室/「エリーゼのために」人気の謎に迫る?!
ピアノを習ったならば、誰もが弾けるようになりたいと憧れる名曲「エリーゼのために」。
ピアノを習って何年くらい経ったら弾けるようになるのでしょう?
また「エリーゼのために」を弾けるようになるには、どのような技術が必要なのでしょう?
「エリーゼのために」は果たしてどれくらい難しい曲なのでしょうか。
どうせ弾くのならば美しく奏でたいですよね。
実は、この曲ほど、難易度について意見の分かれる曲はないかもしれません。
「小学生低学年でも弾ける」
という人がいる一方で
「ある程度の年齢に成長してからでないと弾けない」
など、意見は様々。
ちなみに私は、後者の慎重派の指導者の1人です。それには理由があります。
みんながよく知っている有名な曲だからこそ、どこで誰に聴いてもらっても賞賛を浴びる仕上がりの演奏を身につけてほしい
と思うからです。大人になったときに
「昔は弾けたのに、すっかり忘れちゃった」
では寂しいし、もったいないですよね。
「エリーゼのために」がキチンと弾けるようになると
音楽的財産
になります。また
目の前のことに真剣に打ち込んだ歴史が心に刻印されます。
それは目に見えないし、耳で聞くことはできないし、もちろんお金に代えられるものでもないけれど、とても価値が高く、成長の過程で、影になり、ひなたになり、自分を助けてくれる「よすが」となります。
「よすが」とは「身や心のよりどころとすること。頼りとすること」
を意味する言葉。
「エリーゼのために」を美しく弾けるようになるためには、たくさん練習をして、努力を積み重ねなければならず、一朝一夕で簡単に手に入るものではありません。だからこそ、その経験から得た自信は、どんなに時が経っても決して忘れることはないでしょう。
「ピアノで頑張ることができたのだから」
他のことにだって挑戦できる勇気とパワーがわいてきますよね!
「エリーゼのために」の難易度に対して、どうしてこんなにも意見が分かれるのでしょう?
おそらく、全体を通して何回も登場するメインテーマの部分だけならば、ピアノを習い始めて1年未満のお子さんでも
なんとなく
それらしく
見よう見まねで
カンタンに音が出せるからではないかと思います。
この部分の音符を拾うだけであれば、ブルグミュラーを弾く手前くらいの実力があればクリアできますが
「エリーゼのために」の最も難しい部分は、実はここではありません。
展開部からのへ長調の部分、その後に続く、左手の連打の部分からクライマックスのクロマティックスケールまでが、真の腕の見せ所。私が「土砂降りシーン」と呼んでいるところです。
この緊張感たっぷりの「見せ場」を、いかに芸術的に、音楽的に演奏できるかが、うまく弾きこなすポイントでもあるのですが
当ピアノ教室では、生徒さんたちが「エリーゼのために」を練習する時期について、明確な目安を設けていますので、カンタンにお伝えしましょう。
◉オクターブが余裕で届くこと
◉足が床について、ダンパーペダルが踏めること
この2つの条件が揃っていないと
◉和音を含むスラーで正確に音を持続できない
◉細かなペダリングができず、美しく音を響かせることができない
など、不完全燃焼な仕上がりとなってしまいます。何年習ったから弾ける何歳だから弾けるといった線引きには、私は違和感を覚えます。一人一人の能力や体格は全く違っているからです。
「たどたどしくても構わない」
「子どもが弾きたいといっているのだから、その気持ちを尊重したい」
それも一理あるでしょう。しかしそんな親心を承知の上で、ピアノ指導のプロの視点から、少々辛口の意見を申し上げるならば
❤︎物事には順序があり
❤︎手順を踏んでステップバイステップで進んでいくからこそ到達できる場所が存在する
そんなことを学ぶ機会を子どもたちに与えるのも、教育者の、いいえ、周りの大人の役目の一つなのではないでしょうか。ピアノは結果が出るまでに時間のかかる、息の長いお稽古なのです。
生徒さん一人一人に寄り添い支え、気持ちが上がるような声かけをしたり、励ましたり、心躍る課題を提供してモチベーションを高めることはとても大切だけれど、それは
媚を売ったり
無条件に言いなりになる
こととは根本的に違います。
これから先の人生でも、ピアノと仲良くお付き合いをしていってほしいから
私は、伝えるべきことを毅然と伝えられる勇気と誠意を持った指導者でありたいと思っています。
「エリーゼのために」は、精神的な成熟度も問われる曲です。
音に込められた繊細な情感を汲み取り、自分なりに解釈をして指先に気持ちを乗せて演奏をするためには、小学校低学年では時期尚早です。そもそも
「エリーゼのために」は、恋愛感情を表現している曲
だからです。
「エリーゼのために」を作曲したのは、ベートーヴェンが40歳のときの作品ですが、ベートーヴェンは、この曲を子ども向けに作ったわけではありません。
ピアノ曲には、幼い子どもに適した曲奏で、子どもの手の大きさや筋力を活かした、子どもだから弾きこなすことができる、「エリーゼのために」と同等のレベルの曲がたくさんあります。
期が熟すまでそれらの曲で充分に腕を磨いてから「エリーゼのために」に余裕で取り組めば、生徒さんたちは本来の奏でる喜びや楽しさを大いに享受できるのですよ。慌てて競う必要などありません。
良かれと思ってムードに流されて無理をして背伸びをしても、苦労をするばかりで子どものためにならないのです。
「優しい音が出せるようになった」
「手首や肘のやわらかい動きでできるようになった」
「物事に対してじっくり腰を据えて取り組めるようになった」
これは、当ピアノ教室では「エリーゼのために」の練習を通して、お家の方からいただいたご感想の、ほんの一部です。
今日は最後に、当ブログの人気シリーズの一つである「エリーゼのために」の練習でのエピソードを綴った、お母さんの手記をご紹介いたします。
「一生の思い出になると思うので、文章で記録に残しておきませんか?」
きっかけは、私のそんなお声かけだったことを懐かしく思い出します。あれからもう2年も経ったのですね!
我が子に「いつかエリーゼのためにを弾けるようになってほしい」と願っているお父さん、お母さんのご参考にしていただければ嬉しいです。
シンガポールのピアノ教室/「エリーゼのために」9歳女の子の発表会演奏までのあゆみ〜母の手記①
シンガポールのピアノ教室/「エリーゼのために」9歳女の子の発表会演奏までのあゆみ〜母の手記②
シンガポールのピアノ教室/「エリーゼのために」9歳女の子の発表会演奏までのあゆみ〜母の手記③
シンガポールのピアノ教室/「エリーゼのために」9歳女の子の発表会演奏までのあゆみ〜母の手記④
シンガポールのピアノ教室/「エリーゼのために」9歳女の子の発表会演奏までのあゆみ〜母の手記⑤
頑張ることを楽しむ心を育てる
当ピアノ教室のレッスンは、新時代にふさわしい、ワンランク上の心と音楽を学ぶレッスンです。
ピアノを学ぶことを通して、これからの時代を生きるために必要な「人間力」を育てます。
当ピアノ教室は、シンガポールで最も長い指導歴を持つ日本人のピアノの先生が主宰している出張専門のピアノ教室です。
1992年来星。シンガポールPR(永住権)保有者。