こんにちは。
シンガポールの出張ピアノ教室
fairy wish creation 講師の
塚越 則子(つかごし のりこ)です。
当ピアノ教室は、シンガポールで最も長い指導歴を持つ日本人のピアノの先生が主宰している、出張専門のピアノ教室です。
1992年来星。シンガポールPR(永住権)保有者。
シンガポールは日本とピアノ教室の事情が異なり、法律により、講師の自宅でお教室を開講することは認められていません。
当ピアノ教室は、シンガポール政府の定めた法律を遵守した、講師が生徒さんのお宅に出向いてレッスンを行う、出張ピアノ教室です。
講師 塚越 則子(つかごし のりこ)は、ヤマハ認定グレードにおいて、ピアノ、エレクトーンの演奏、指導共に最高位のグレードを保持する指導者であり、鍵盤楽器のプロフェッショナルです。
今日は、新春特別企画【弾き初めチャレンジ2022】の第3日目です。
第1日目はこちら。
第2日目はこちら。
第3日目にご紹介するのは12歳のDくんです。
Dくんは、現在練習しているバッハのインベンション14番を演奏してくれました。
電子ピアノのハーブシコードの音色で、とても丁寧に一音ずつ弾いている様子がわかります。
終わり方も大変美しいです。
どうしてバッハ?
ピアノを学ぶと
バッハは大事!
バッハを練習しなさい!
と、よく言われます。
子供時代にピアノを習ったことのある方は、ブルグミュラーが終わったあたりでバッハのインベンションを併用し始めたという経験を持つ方がほとんどだと思います。
しかし残念なことに、ここで挫折したという方が実に多く、当ピアノ教室の保護者の方々にピアノ歴を伺っても、似たようなパターンが多い傾向にあります。
いかにして、バッハに拒否感を感じず、前向きに取り組んで行けるかが、今後のピアノ人生を左右するカギ。そう考えると、バッハの練習に差し掛かる頃というのは、ピアノのお稽古の一つの正念場とも言えるでしょう。
ちなみに、私がバッハのインベションを初めて弾いたのは、小学校3年生の時でした。その少し前からピアノの先生の勧めで、ご紹介いただいたプロの作曲家に音楽理論と和声法を師事していましたが
バッハの練習を始めたと先生に話すと、早速アナリーゼ(音楽分析)の基礎を指導してくださり、そこから曲の仕組みを紐解いていくおもしろさの虜になっていった記憶があります。
へぇ、こんなふうに作られているんだ!
小学生の私にとってバッハを学ぶことは、音楽の解剖学を学ぶようなスリリングな魅力がありました。Dくんとのレッスンでも、以前そんな話をしたことがあります。
シンガポールの出張ピアノ教室/バッハの曲を解剖?音楽理論入門編(12歳ピアノ歴9年)
作曲の先生には高校生まで師事しましたが、先生のおかげで私はバッハの魅力や偉大さを知ることができました。今でも心から感謝しています。
レッスン中は冗談はおろか笑顔一つ見せず、一切の妥協を許さない真面目な性格でおられ、とてつもなく厳しい先生でしたけれど・・・笑
639年かけて演奏される曲?!ドイツの教会で7年ぶりに新しい和音。
♣︎何でバッハを弾かなければならないのか?
♣︎ホントにバッハを弾けばピアノが上手くなるのか?
その疑問の底にあるのは
バッハ難しすぎ!
上手く弾けない!
本音は
バッハなんかイヤ!
おもしろくない!
弾きたくない!
だろうと想像します。バッハの音は、子どもたちにとって、親しみにくい音楽のようです。
さらっと弾くことができず、音が複雑に入り組んでいるので、スラスラ弾けるようになるためには相当の練習量を必要とすることが最大の理由でしょう。曲も生真面目で、一見、とっつきにくいイメージですよね。
では、一体誰が「バッハを弾け!」「バッハは大事!」と言っているのでしょう?
そのルーツをたどると、シューマン、ショパン、ベートーヴェンの時代まで遡ります。
そしてモーツァルト、メンデルスゾーン・・・さらに辿っていくと、バッハの息子たちの弟子(の弟子)ということになり、やがてバッハ本人にたどり着きます。
先行研究を知って学ぶことの大切さは、音楽においても例外ではありません。
そもそも、作曲家と演奏家が独立したのは音楽史的にはごく近年で、20世紀半ば以降のことです。
それ以前は、作曲家と演奏家というカテゴリー分けはなく、音楽家というのは自分で曲を書いて自ら演奏する人達でした。
ショパンも、リストも、ベートーヴェンも、モーツァルトも、自分で曲を書き、その作品を自ら演奏していたのです。もちろんバッハもその1人です。
もともとバッハは、インベンションや平均律などの鍵盤楽器のための作品を「教材」として作曲しましたが、それは単に演奏のためだけでなく、作曲の勉強のためでもあリました。
♣︎わたしは作曲したいわけではないし、作曲の勉強なんていらない
♣︎好きな曲が弾ければ、それで満足
ピアノ愛好者の中には、そう感じる方もおられるかもしれません。
しかし、ちょっと考えてみてください。文法をわからないで外国語を理解するのが不可能なように、音楽もまた「音楽の文法」を知らなければ、その曲が何であるかを理解するのは無理で、仕組みが理解できなければ、完成度の高い演奏をするのは不可能なのです。
ショパンやリストの人気作品の多くは、甘く耳馴染みの良いメロディーラインゆえに人気ですが、ピアノは楽器の性質上、メロディも伴奏も全て1人で全てをこなさなければならず、ヴァイオリンやフルートのようにメロディーだけを演奏するわけではありません。
バッハの音楽は「メロディーと伴奏」から構成されているのではなく、「メロディーとメロディー(とメロディー・・・)」から成り立っており、これを【ポリフォニー(多声音楽)】と言います。これに対して、「メロディーと伴奏」で構成されている音楽を【ホモフォニー】と言います。
インベンションや平均律クラヴィーア曲集を勉強するということは、単にピアノの鍵盤の上で指を動かすということだけにとどまらず【ポリフォニー音楽から音楽の仕組みを学ぶ】という意味を含んでいます。
ショパンも、シューマンも、メンデルスゾーンも、ベートーヴェンも、モーツァルトも、そうやってバッハを勉強し、尊敬し、自らの作品に活かして作品を描いてきました。
作品を分析するとわかるのですが、実際彼らの曲はポリフォニー的な性格がとても強く、バッハから大きな影響を受けていることがわかります。
そう考えると、バッハの音楽は「クラシック音楽の原点」と言っても過言ではないでしょう。
まさにバッハは音楽の父なのです。
「なぜバッハを弾かなければならないのか?」の問いには
クラシック音楽はバッハ抜きでは語れないので、ピアノをさらに上達させるためには、この偉大な先人から多くを学ぶことに価値があるのですよ
という答えに落ち着きます。
私は、Dくんが2022年の弾き初めチャレンジにバッハを演奏してくれたことに、今年のDくんのピアノへの強い意気込みを感じています。
昨年の発表会ではベートーヴェンの「悲愴」第一楽章に挑戦して立派な成果を収め、努力の先にある達成感を手中に収めたDくんです。
現在は、バッハと併せてモーツァルトを練習しています。今年は、さらにしっかりと基礎の足固めに取り組みながら、飛躍の1年にしましょうね。
ストリートピアノへの憧れなども密かに胸に秘めているDくん。
今年は人前で演奏するチャンスが恵ってきたら積極的に参加して、ピアノを奏でる楽しみを、どんどん開拓していきましょう!
Dくん、今年も一緒にがんばろうね!
明日、第4日目の【弾き初めチャレンジ2022】は、ピアノレッスン歴が3年目に入り、ますますやる気度がアップしているRちゃん、7歳です。大きな目標も語ってくれましたよ。
どうぞお楽しみに。