こんにちは。
シンガポールの出張ピアノ教室
fairy wish creation 講師の
塚越 則子(つかごし のりこ)です。
当ピアノ教室は、シンガポールで最も長い指導歴を持つ日本人のピアノの先生が主宰している、出張専門のピアノ教室です。
1992年来星。シンガポールPR(永住権)保有者。
シンガポールは日本とピアノ教室の事情が異なり、法律により、講師の自宅でお教室を開講することは認められていません。
当ピアノ教室は、シンガポール政府の定めた法律を遵守した、講師が生徒さんのお宅に出向いてレッスンを行う、出張ピアノ教室です。
講師 塚越 則子(つかごし のりこ)は、ヤマハ認定グレードにおいて、ピアノ、エレクトーンの演奏、指導共に最高位のグレードを保持する指導者であり、鍵盤楽器のプロフェッショナルです。
作曲家のすぎやまこういち先生について、生徒さんのお1人と、レッスンで話をしました。
中学1年生のAちゃんは、つい数ヶ月前、レッスンで『ドラクエ』の「この想いを…..」のピアノバージョンを仕上げたばかりです。
先日のオンラインレッスンで、すぎやまこういち先生について尋ねてみると、すでに訃報を知っていたようでした。
すぎやまこういち先生といえば『ドラゴンクエスト』を思い浮かべる方も多いでしょう。
すぎやまこういち先生は、1986年に『ドラゴンクエスト』の作曲を担当したのをきっかけに、シリーズの500曲以上に及ぶ楽曲のすべてをお一人で作曲されており、制作中の『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』が最後の作品となりました。
今年7月に開催された、2020年東京オリンピックでは、開会式の各国入場の行進曲として『ドラゴンクエスト序曲:ロトのテーマ』が使用され、話題となったばかりです。
作曲は独学で。
すぎやまこういち先生の音楽のルーツをたどると、音楽好きのご家族から受けた影響が大きく、恵まれた音楽環境のもとで育ってこられたことがよくわかる、数々のエピソードに出会います。
おばあさまが歌ってくれた子守唄は讃美歌だったそうですよ!
小学校時代は、お父様のお仕事の影響で引越しが多く、転校を繰り返したそうです。
シンガポールに住んでおられる駐在員ご家族の皆さんは、親しみを感じられるかも知れませんね。私も幼稚園、小学校の頃は転勤族の1人でしたよ。
私が音楽を学び始めたのは、父の転勤で広島県福山市に住んでいた5歳になりたての頃です。
すぎやま先生は、小学生になると、鼻歌で作曲を始めたのだそうです。
中学に入学された頃は、戦況の悪化に伴って疎開も経験され、戦後には食糧不足から壊血症になるなど、生死の境目をさまようこともありましたが、そんな時期も、すぎやま先生にとって、音楽はかけがえのない存在だったようです。
お父様が焼け残った自宅に残っていた反物を持って荻窪の駅前にあったレコード屋に行き
物々交換で手に入れたベートーヴェンのレコードやオーケストラの楽譜を元に、オーケストラスコアを見ながら、レコードがすり切れるほど聴いて「耳学問」で音楽理論を身につけました。
「田園」のレコードを蓄音機で聴きながら、コントラバスのパートを声で一緒に歌ったことなどもあったそうです。
すぎやまこういち先生は、音楽を専門的に学んだ経験はありませんでしたが、ハ長調とホ長調など、違うキーの曲を同時に鳴らすことで独特のハーモニーを生む「複調(多調)」など、クラシックの高度な技法を独学で習得された「努力の人」ということでも有名です。
先に挙げた、東京オリンピック2020の開会式で使われ『ドラゴンクエスト序曲:ロトのテーマ』は、ゲーム音楽屈指の名曲と賞されていますが、なんと、たった5分で作曲されたというから驚きです。
まさに「突き抜けている」という表現が、ピッタリだと思いませんか?
世代を超えて、人々が魅了される、すぎやまこういち先生の作品の数々。
今年の5月ごろ、当ピアノ教室では新型コロナ肺炎によるシンガポール国内の規制の強化を受けて出張レッスンができなくなり、約1ヶ月の間オンラインレッスンを実施していましたが
ちょうどその頃、Aちゃんが、自ら選んで弾いていたのは、すぎやまこういち先生が作曲された「この想いを….」という曲です。
シンガポールの出張ピアノ教室/「乙女の祈り」の練習に入りました♬(12歳ピアノ歴6年)
この曲は『ドラゴンクエストVlll 空と海と大地と呪われし姫君』の中の一曲ですが、切なさを感じるメロディや、ファンタジックな和音構成が特徴です。
Aちゃんに
「どうしてこの曲を弾きたいと思ったの?」
と尋ねると
「この曲が好きだから」
とシンプルな答えが返ってきました。
Aちゃんは『ドラクエ』のゲームをプレイした経験は一度もないそうですが、この曲は聴いたことがあって、よく知っていたのだそう。
「どこで知ったのかな???」
そこでお母さんが、タイミングよく助け舟を出してくださいました。
「うちは夫婦ともに弦をやっていたので」
なるほど、それで納得がいきました!
『ドラゴンクエスト』のオーケストラバージョンのサントラ版を、ご家庭でよく聴いておられた影響で、曲が耳に馴染んでいたようです。
すぎやま先生の曲は、世代を超えて、聴く人の心をつかむ、不思議な魅力がありますね。
ちなみに、すぎやまこういち先生は、私が愛してやまないウルトラマンシリーズの一つ「帰ってきたウルトラマン」の主題歌も手掛けられ、CMソングを200曲以上作曲されるなど、音楽のジャンルを超えて幅広い活躍をされました。
シンガポールの出張ピアノ教室/則子先生の音楽原体験はウルトラマン?!
私が、すぎやまこういち先生の曲から感じるイメージを一言で表すと「カラフル」。
何回聴いても飽きないバリエーション豊かな曲想は
元気で明るい、だけど切なくもあり悲しくもあり
ダイナミックであり繊細でもあり
聴く人によって、様々な色彩を放つ、まさに”音の万華鏡”です。
すぎやまこういち先生は、生前『ドラゴンクエストシリーズ』の作曲について
「音楽を作るのは天職だと思っています。命ある限り曲を作っていきたい」
と語っておられたそうです。
これからも、すぎやませんせいは、多くの音楽ファン、ドラクエファンの人たちの心の中で、永遠に生き続けることでしょう。
ありがとうございました。そしておつかれさまでした。
最後まで音楽と共に生きた、偉大なる音楽家、すぎやまこういち先生のご冥福を、心よりお祈りいたします。