こんにちは。
シンガポールの出張ピアノ教室
fairy wish creation
塚越 則子(つかごし のりこ)です。
1992年来星。シンガポールPR(永住権)保有者。
シンガポールで1番長い指導歴の日本人ピアノ講師です。
シンガポールは日本とはピアノ教室の事情が異なり、講師の自宅でお教室を開講することは法律で認められていません。
当ピアノ教室は、シンガポール政府の定めた法律を遵守した、講師が生徒さんのお宅に出向いてレッスンを行う、出張ピアノ教室です。
Q&Aシリーズ⑩
先生のお宅でのレッスンはありますか?
いやいや期真っ只中の4歳ちゃんへの対応は?
お兄ちゃんのレッスンが終わって自分のピアノの時間になったのに、ソファに横になったまま、なかなか気持ちが立て直せない4歳の妹ちゃん。
どうやら、お天気のせいで眠いのが最大の理由のようです。
このようなことは幼児期のお子さんにとって珍しいことではありません。何回か促してもなお、やる気が出ない時は、お歌に誘ってみたり、ワークブックの塗り絵を勧めたり、しばらく様子を見るようにします。
それでもまだご機嫌が直らないときは、無理強いすることは、かえって逆効果。
幼児期のお子さんのピアノレッスンにとって一番大切なことは、ピアノにご機嫌で向かうことです。
気持ちが乗らない時は迷わず「パパ、ママへのワンポイントレッスン」や「ピアノ演奏鑑賞会」にささささ♬っと切り替えるのが得策!
【シンガポールの出張ピアノ教室あるある】バスで眠って帰宅しました(涙)
内容は様々。その時の状況に応じて臨機応変に対応しています。
どの生徒さんも、同じパターンをいつまでも繰り返すことはなく、レッスンを継続していくうちに下地が徐々に出来上がってきて、上手く気持ちを切り替えて、自分からピアノに向かうようになります。
たった数ヶ月の間でも、お子さんは着実に成長していきます。
ペースがつかめるようになるまでの期間は、生徒さんによってまちまちですが、レッスンの間、お母さんにぴったりとくっついて離れない3歳、4歳の生徒さんも、最初の数回のレッスンで、すでに
則子せんせーきた
いまはピアノの時間
と、状況をわかって、きちんと理解していますので、焦ったり心配する必要は何もありません。
シンガポールの出張ピアノ教室Q&A3/レッスンは同席した方が良いですか?
イヤイヤ期の生徒さんの
「イヤだ、やりたくない」は、一過性。
成長の証です。
私は、これまでに数百人の生徒さんたちのピアノ指導をしてきたので、今では、イヤイヤ期の生徒さんに接すると、「イヤイヤコレクション」が増えた!と、むしろワクワクしてしまうくらいで、お母さんと一緒に、身体全体が拒否の塊になっている「何でもかんでもイヤイヤちゃん」の姿を見て、笑ってしまうこともしばしばです。
ねえ覚えてる?
出会ったときは、あんな赤ちゃんみたいなこと言ってたんだよ〜
そんな話をしながら、笑い合う時が来ることを、則子せんせーはお見通しです(笑)
リクエストは、まさかのテレサテン!
4歳さんは、この日疲労困憊で、もはや起き上がる元気もないようでしたので、お母さんのリクエストを受けて、私がピアノを弾くことになりました。
お母さんは「わぁい、待ってましたー」と喜んでくださったものの、突然のことなので、なかなか曲のタイトルが思い浮かばずに悩んでいるご様子。
ピアノを習ったことがないこともあって、どうやらパッと頭に思い浮かんでくる曲は、ピアノ曲よりも、普段慣れ親しんでいた、懐メロ特集にあるような昭和の時代の歌のようです。
「バブルの頃の歌も詳しいですよ!」
「父がよくカラオケで歌っていて私もよく知っています、テレサテンとか」
!!!!!!!!!
間髪入れずに「時の流れに身をまかせ」のイントロを弾くと
お母さんは、いきなり
わぁ〜〜!!!っと
叫んだかと思うと、突然、千葉に住んでおられるお父様にLINEをすることを早口で告げ、iPhoneに向かって
「お父さーーーん!
今ピアノの先生が来てくれていて
ピアノを弾いてくれてるから!
お父さん、聴こえてるー?」
と、絶叫(笑)
大興奮のこちらの状況に、何が起こったのか?!と言いたげに、目をパチパチしてびっくりしている画面の中のお父様に、笑顔で会釈しながらピアノを弾き続けていると、しばらくして、微かに、音に合わせて歌う声が聴こえてきました。
そして弾き終わると、お父様は、カラオケが趣味で、先頃他界された日本の歌謡界の作曲家の大御所でいらした「筒美京平」さんの曲がお好きなことなどを、ポツリ、ポツリと話して下さいました。
ジュリーの「時の過ぎゆくままに」
河島英五の「酒と涙と男と女」
これらの歌謡曲は、今までに一度も弾いたことはありませんが、何回も耳にしたことがある、お馴染みの懐かしい歌なので、記憶の糸を手繰り寄せながら弾いてみると、お母さんは
わぁ、ピアノの先生って、譜面がないのに何でも弾けるんですねぇ!!
と、目を丸くしながら一言。
いえいえ(笑) 譜面がなくても弾けたり、歌謡曲を弾くことができるのは、ピアノの先生だからではなく、アーティストとして演奏活動をしていた経験があるからです。
普通、ピアノの先生は歌謡曲は弾きませんし、譜面がない曲も弾きません。付け加えると、突然のリクエストにお応えすることもありません(笑)
お父様、また弾きますからリクエストくださいね。
LINEを終えた後、生徒さんのお母さんは、ご実家で一人暮らしのお父様の身の上話をしてくださったのですが、その話は私の胸を貫きました。
「父は母を亡くして以来、カラオケが趣味で、歌うことが生きがいなんです」
私は、母と父を相次いで亡くしています。
私の父もカラオケが趣味で、昔の職場の同僚や学生時代の友人とカラオケに行くのが楽しみでしたが、母がいなくなってすっかり気落ちしてしまい、何もかもやる気を失って体調を崩したまま、後を追うようにして空へと旅立ってしまいました。
当時の父の、底知れぬ深い孤独に思いを馳せるとき、私は今でも胸をえぐられるような気持ちを抑えることができません。
この生徒さんのじいじは、もう20年間も、千葉で一人暮らしをして頑張っておられるとのことです。大変ご立派ですね。
両親がいた2000年頃は、まだスマホもなく、LINEもない時代でした。
海外に離れて住んで、娘として父親のことが常に心にあって心配だったものの、できることといえば、週に一回電話をして近況を尋ねることぐらいで、無力な自分に歯がゆい思いをたくさんしましたが、2020年の今は違います。
お互いに顔を見ながら、自由に会話ができるのは、もはや当たり前。
4歳さんは、これからもっとピアノが上手に弾けるようになって、じいじにピアノの音をリアルタイムで届けて、海を越えて、じいじにピアノで元気を届けることが瞬時にできるようになるのです、まるで夢のようではありませんか!!!
生徒さんの日本に住むおじいちゃん、おばあちゃんが、シンガポールに遊びに来た時、ピアノレッスンをご見学されて、ご挨拶をさせていただくことはよくあることですが、初めましてのご挨拶がLINEの画面で、しかも「テレサ テン」を弾きながら、と言うのは、もちろん初めての経験です。もしかしたら、これはコロナがくれた贈り物なのかもしれません。
すごい時代になりました。今年は想像を絶するようなことのオンパレードですが、だからこそ、「音楽の力」が、さらに増強していると感じます。
今回お父様と繋がることで、改めてピアノを奏でることの喜びと感動を再認識した私です。
昭和歌謡やニューミュージックはメロディラインが美しい曲が多くて、ピアノで弾き映えする曲が数多くあり、当ピアノ教室の大人ピアノのレッスン生にも人気です。
ちなみに疲労困憊の4歳さんは、昭和歌謡を子守唄に幸せそうな顔で起きることはありませんでした(笑)
「お父様、またピアノ弾かせて下さい!! お好きな曲を、どんどんリクエストして下さいね」♬