こんにちは。
シンガポールの出張ピアノ教室
fairy wish creation
塚越 則子(つかごし のりこ)です。

 

 

シンガポールに住む日本人の方々のお宅に出向き、ご自宅でピアノ指導をしています。
プロフィール

 

 

さて
みなさんは離れているけれど会いたくてたまらない人はいますか?
この世にはいないけれど、夢でも幻でも構わないから懐かしい声を聞きたいと切望する人はいますか?

 

 

私は両親と小学生時代に師事したピアノとエレクトーンの先生に会いたいです。

 

 

思いのほか急いで空に行ってしまい、今は時々ふいに夢で会いに来てくれるだけの人達。

 

 

両親が他界したのはもう10年以上前。当時は携帯電話の機能やネット環境は今とまるで違っていました。母に関して言えば、私は病院から最後にかかってきた電話の留守電メッセージを誤って消してしまったことを今だに悔やんでいます。たとえ何年経ったとしても声から命を鮮明に感じ取ることができたかも知れないと思うからです。

 

 

 

空に旅立った人にLINEメッセージを送る人の気持ち、よくわかります。

 

 

既読はつかないし返信はないとしても、メッセージを送るというアクションは能動的なコミニュケーションです。いないとわかっていても、いるときと変わらないやり方で、こちら側から繋がろうとする手段があることは気持ちの均衡を保ったり前に進むパワーを生むきっかけになると思うからです。

 

 

昨年、AIで美空ひばりさんを蘇らせる試みが反響を呼びました。

 

 

ヤマハのVOCALOID:AI™を用いて昭和歌謡界を代表する歌手を蘇らせるという挑戦的な取り組みでした。VOCALOID:AI™を通じたヤマハの挑戦は、AIという最新技術を感性を携えた人間が活用することで、過去には実現しえなかった新たな「表現」を世に送り出していくことだそうです。私は来星前日本で、ヤマハのデモンストレーターをしていた時代に、ヤマハ本社の技術部に赴き新商品開発にも携わっていたため、エンジニアの方々の並々ならぬ努力や情熱が容易に想像できます。

 

 

最新技術を結集した新たな表現を生み出す試みには賛否両論が巻き起こりました。倫理観や商業的観点など、それぞれの立場から活発な議論が酌み交わされることは至極健全であり、これからの時代に必要なことです。

 

 

アーティストとしての側面から考えたとき、自分に何もなす術がないのに、自分の映像や楽曲に手を加えられ、ともすると「無断で商用利用されてしまう」ことに強い拒否感を覚え、冒涜だと憤る気持ちが湧き上がるのは音楽業界に身を置く立場として大変よく理解できます。

 

 

それを物語るような思い出は遥か昔、高校時代の多感な頃まで遡るのですが。。。

 

 

学年ごとに実施される合唱コンクールでクラスの学級会の多数決でその年歌うと決まった、当時の日清カップヌードルのCM曲「Born free spirit 」の合唱用の楽譜が探してもどこにも存在せず、困った学級委員長から直々に楽譜作成を頼まれてレコードを聴いて歌謡曲のオリジナルの音源から三部合唱にアレンジをして、作成した楽譜をクラスに提供し、本番に向けて練習していたにもかかわらず、体調を崩して1週間ほど学校を休んでいる間に、クラスの中の「ピアノが得意な人たち」によっていつの間にかアレンジにはなかったリンバリンが加わっているとクラスメイト達が自宅にお見舞いに来てくれた時に教えてくれて。。。

 

 

そのリズムがバウンスのリズム✴︎にマッチしない(と私が思う)8分音符刻みのため、アレンジそのもののカラーが変わってしまい(と私が思う)1人密かに泣きました。頭の中は「それなら一言先に知らせて」のリフレイン。今思い出すと幼さに笑ってしまいます(笑)

 

✴︎バウンスとは、音を弾ませる奏法の一つです。他にシャッフル、スイングなどがあります。

 

 

空にいるひばりさんはどうでしょう。私はこのように推察します。

 

 

ひばりさんは、養子縁組した息子さんを目の中に入れても痛くないほどに可愛がっていたといいます。

 

仕事で地方に泊まりがけで行く前には、夜寂しくないようにと、絵本を読んでテープに録音して「これを聴きなさい」と用意していたそうです。

 

 

AIひばりのプロジェクトは、息子さんの合意があって進められました。どのような背景があるにせよ、あの世でもきっとひばりさんの魂は今も1人の母親であり、アーティストであり続け、息子さん、ファンの方々が喜ぶ姿を見ることを魂の永遠の幸せとして存在しているのではないでしょうか。

 

 

ファンの方々も息子さんもAIひばりさんを見て一様に号泣していました。私は特別ファンではないものの、偉大な歌手としての尊敬の念を未だ持ち続けているため、やはり感動して涙が止まりませんでした。遂にこんな時代が来たんだ、音楽の命が形を変えて蘇ってきてこんな偲び方ができるようになったのか!という新しい時代の幕開けへの歓喜の涙です。

 

 

 

 

 

新しい思い出を一緒に作っていくことがもう2度と叶わないと実感することが見送った人の寂しさの一つならば、AIがその心の隙間を埋めてくれるのかも知れないと一縷の望みを頼りに生きることで救われる人はたくさんいると思います。

 

 

私もその1人。
私の音楽家としての礎を築いて下さった小学生時代ピアノとエレクトーンを習っていた加藤 美代子先生は38歳の若さで旅立たれました。

 

 

その2年前には先生のピアノ教室の門下生の発表会のゲストとしてお招きいただき、私は当時クラビノーバデモンストレーターとして海外での演奏の時に気に入ってよく弾いていた、スティービーワンダーの「Isn’t She Lovely 」をJAZZアレンジで弾き、先生はクラッシックピアノの名曲、ランゲの「花の歌」を柔らかな微笑みを浮かべて演奏されました。

 

 

VOCALOID:AI™の技術が更に進化したら、先生の演奏を再び聴かせてもらえるかも知れない。

 

 

偽物でいいのです。

 

 

偽物で構わないから、再び蘇って戻ってきてくれたような感覚を束の間味わえるのならば、一度だけでいいから体験してみたい。先生と一緒にピアノを奏でて、私の生徒さん達にも聴いてもらうことができる夢のような時代がもし来たとしたら何て素敵。考えただけでワクワクしますが同時にとてつもなく緊張してしまいます。

 

 

あぁ、、、その時のためにも、私はもっともっともっともっと練習を積まないと。新たな目標に向かって終わりのない研鑽の日々は、これからも続きます。