こんにちは。
シンガポールの出張ピアノ教室
fairy wish creation
塚越 則子(つかごし のりこ)です。
1992年来星。シンガポールPR(永住権)保有者。シンガポールで1番長い指導歴の日本人ピアノ講師です。
当ピアノ教室は、シンガポール政府が定めたお稽古ごとの教室開講ガイドラインに沿った出張ピアノ教室です。
シンガポールでは、集合住宅でのピアノ教室の開講は賃貸、分譲、公団、民間全てにおいて法律で認められていません。
日本では個人の先生にピアノを習う場合、講師の住居の一室をスタジオとして使用したピアノ教室に通うのが一般的ですが、シンガポールは日本と事情が大きく異なります。
今日は、当ピアノ教室がシンガポールの日本人講師のピアノ教室として開講当時から現在まで大切にしている特徴の一つについてお話するシリーズの3回目です。
同シリーズの記事:
日本とはここが違う!/シンガポールのピアノ教室だから大切にしていること ①
日本とはここが違う!/シンガポールのピアノ教室だから大切にしていること ②
当ピアノ教室の子どもの生徒さんのほぼ全員は、転校生経験者です。
当ピアノ教室の生徒さんの中心は駐在員ご家族のお子さんです。シンガポール生活の中では未就学児で経験をしなかったとしても、将来日本や他の国に移動したときには、卒業のタイミングと重ならない限り必ず転校生の立場を経験することになります。
シンガポール生活では自分が転校する前に転校生を迎えたり、仲良しのお友達の本帰国を見送る経験をするお子さんが殆どです。
親しいお友達との別れはショックも大きいようで、ビデオ通話も最近では一般的になったとはいえ、やはり心に穴の空いたような気持ちは、しばらく続いていくようです。
ピアノレッスンの際、あれ?何だかいつもより元気がないかな?具合は悪そうには見えないけれど。そんな時、保護者の方にそれとなく尋ねると案の定、親友のお見送り直後、というのはよくあることです。
出会いと別れのサイクルが目まぐるしいシンガポール生活。そのサイクルは年を追うごとに速くなっているように感じます。最近では来星から離星までの期間は平均3年ほどです。
私は父の転勤先の島根県松江市で生まれ、4歳から小学1年生1学期までを福山市で過ごし、その後横浜に引っ越してからも小学4年生の3学期に1度転校を経験しました。
今と違ってのんびりした昭和の時代でしたが、小学生1年生の時はつい口から出てしまった広島弁を笑われて恥ずかしい思いをしていた時、1人の同級生が助け船を出してくれてから更に「横浜ではね “冷たい”は”しゃっこい”っていうんだよ!」と、小声で新情報を伝授してくれたことをよく覚えています。
小学4年生の3学期の時の転校は、クラスに馴染めなくて辛かったですね。クラス全体が先生を中心として1つのチームでまとまっている1年の総まとめみたいな最終学期に、1人だけ誰とも1年間の思い出を共有できない私がぽつんと入っている訳ですから、存在自体が異質だったのでしょう。
担任の先生は1年の年間行事を振り返りながら、リーダー格の児童たちと一緒に終業式までの日々のクラスのムードを盛り上げていくことに毎日一生懸命で、様々なことに不慣れな転校生の私を気にかけてくれることは一切なく、存在さえ見えていないかのような振る舞いに触れるたびに何度となく諦めと疎外感を味わいました。
しかし何とか自力で突破口を見つけ「飼育係」に立候補したことで仲良くなったクラスの子から、ある日家で飼っているインコが何回も卵を生んだ経験があって、ヒナを育てたこともあると聞きつけ、「次にヒナが生まれたら、私に1羽ちょうだい」と頼み込み、セキセイインコのヒナを貰ったことが私の小4学校生活9回裏、逆転ホームランとなりました!
その友達とはヒナのお世話の仕方を毎日教わるうちにすっかり仲良くなって、休み時間には一緒にあやとりをしたり、ゴム跳びで遊んだり、当時夢中だった「楳図かずお」の漫画の貸し借りをしたりしました。家に招いてピアノやエレクトーンの演奏を聴いてもらったりもしましたよ。
インコは元気に成長して、おしゃべりをすることはない代わりに、ピアノやエレクトーンの練習を始めると自分も負けじと大声で鳴いて、毎日毎日休むことなく練習にエールを送ってくれました。
ある時期からは、声援が激し過ぎて?!練習を始める前に紫色のふろしきを鳥籠にかけて人工的に夜の状態を作って大人しくさせていた程です(笑)
転校生の気持ちは、実際に経験しないとなかなかわからないものです。
シンガポールの駐在員ご家族のお子さんは、自分が転校生と転校生を迎える立場の両方を経験するため、相手の立場に立って「もし自分だったら」と置き換えて考える優しさを持つ、思いやり深いお子さんが多いですね。大人も見習うべきことがたくさんあります。
やさしさの本質〜Sくんとのシンガポールピアノレッスンの思い出〜
年一回のピアノ発表会は、新しいピアノ仲間を作るチャンスです。
当ピアノ教室の生徒さんには、知らないお友達にも優しい言葉をかけてあげたり、1人でいるお友達を気にかけて一緒に仲間に入れてあげるような温かな思いやりを育んでほしいとの願いから、年に一度、一同が会す発表会に於いて、初めて顔を合わすお互い知らない生徒さん同士でも、同じピアノ教室のピアノ仲間として交流が持てる数々の工夫をしています。
たとえばリハーサル。保護者の方には一旦待機していただき、生徒さん達と講師だけでリハーサルを実施します。大人を交えず子どもたちだけでお互いに協力し合い、学ぶ場を設けるためです。
お辞儀の練習や音出しの時には、他のピアノ仲間さんの振る舞いや演奏に注目してもらうように舞台袖で、並んで立って順番待ちです。
保護者の方と一緒の時には見せない大人びた表情を見せたり、普段の引っ込み思案な性格とは全く違う積極性を発揮して、何回も入念にリハーサルを重ねる生徒さんなど、いつものご自宅でのレッスンとはまた違った一面を見るたびに頼もしく思うことばかりです。
自宅での個人レッスンのため、生徒さん同士が直接交流を持てる機会は発表会やイベントの時だけに限られていますが、リハーサルの音出しの際は、ピアノ仲間さんがお辞儀をしたり弾き終わるたびに自然発生的に拍手が起こります。
自発的に自分より歳下のピアノ仲間さんの面倒を見て並ぶ位置を教えてあげたり、声をかけてあげる様子も見られます。
音楽は言葉を超えたコミニュケーション。当ピアノ教室の生徒さん達は、シンガポールを離れた後別の国に行ったり、日本に帰った後、違う地方の人たちや違う国の人たちと知り合って違う文化や違う言葉に触れる機会も数多くあるでしょう。上手く意思の疎通ができない時もあるかもしれません。でも大丈夫。皆さんにはピアノという強い味方がいつも一緒にいますよ。
これからの未来は、お互いがより協力しあって助け合っていく世界です。
当ピアノ教室では、日本を離れた海外でのシンガポール生活で、ピアノレッスンを通して豊かでしなやかな心を育て、一人ひとりの人間力を高めていきます。