こんにちは。
シンガポールの出張ピアノ教室
fairy wish creation 講師の
塚越 則子(つかごし のりこ)です。
昨夜遅く速報が飛び込んできました。
世界的な音楽家、坂本龍一さん(教授と呼ばせていただきます)が、71年の生涯を終え、空に旅立たれました。
この数年は、病気との壮絶な闘いでいらしたので、今は辛さから解放されて、もう、これ以上苦しまなくてもいい世界におられるのだと思うと、少し気持ちが救われるような気がします。
私の母も同じ病でした。旅立ちは68歳でした。
日に日にできることが減っていき、どんどん意識が混濁していく
命の炎が徐々に細くなっていく中、さいごのさいごまで音楽とともに気丈に生き、生涯現役を貫いた教授の作品に、常に一貫して流れていたのは
洗練さ
コミカルな楽曲であっても、音の選び方一つ一つにこだわりと気品があり、作品全体が繊細な知的さに満ちていました。
◆なぜここでフラットなんだろう?
◆ここでこのコードを挟んで、このあと、一体どこに転調するのだろう?
作曲法を専門的に学んだ者にとってさえ、そんな好奇心を掻き立てる魅力的な技法が、教授の曲には随所に散りばめられていました。
作風にはお人柄もよく現れていましたね。
その一端を垣間見るようなエピソードをご紹介しましょう。
教授が映画音楽作りで意識してきたのは「監督の意向」だといいます。
2016年のインタビューで教授は
「作る際に決まったパターンはない。監督が求める音を翻訳するのが僕らの仕事」
と語っています。また
「映像で十分表現されているものを音楽で上塗りする必要は感じない」
「語り尽くされていない空白を表現することに意味がある」
との思いを明かしています。
ピアノ愛好家の方は、一度は教授の曲を弾いたことがあったり、これから弾いてみたいと憧れている方も多いのではないでしょうか。
当ピアノ教室でも、大人ピアノの生徒さんとの会話の中で、教授の話題は必ずといっていいほど登場します。
偶然にも、教授が旅立ったまさにその日の最終レッスンで、大人ピアノの生徒さんが弾いていたのは、教授の曲でした。
信じたくないです
悔しいです
病気が憎い!
教授の訃報を受け、私の周りの仲間たちは、今日は教授の曲を弾いたり聴いたりして過ごし、喪に服すと決めたようです。
明美ちゃんは、どの曲を弾くのでしょうか?
東京特派員は、仕事を終え帰宅したあと「千のナイフ」のレコードに針を落とすかもしれません。
私も、 気の済むまで弾いて、教授の音楽に浸りたい気持ちでいっぱいですが、泣き腫らした顔でレッスンに向かうわけにはいきません…
2021年のクリスマスイヴに、自宅のクラビノーバで弾いて録音した「戦場のメリークリスマス」を聴きながら、心静かに、みなさんと共に教授を偲びたいと思います。
教授、素晴らしい作品の数々を生み出してくださり、どうもありがとうございました。
これからも、尊いあなたの作品たちを大切に受け継いでまいります。
どうぞ安らかに。