こんにちは。
シンガポールの出張ピアノ教室
fairy wish creation
塚越 則子(つかごし のりこ)です。
1992年来星。
シンガポールで1番長い指導歴の日本人ピアノ講師です。
当ピアノ教室は、シンガポール政府のお教室ガイドラインを遵守した出張ピアノ教室です。
今日は、ピアノを演奏する人なら絶対にマスターしたい「ブラインドタッチ」についてのお話です。この言葉は、音楽だけに使われている用語ではありませんので、どこかで耳にしたことがある方という方も、きっともおられることでしょう。
タッチ・タイピング(英: Touch typing)とは、パソコンやワープロにキーボード入力を行う際に、キーボード面の文字刻印に頼ることなく、指先の感覚だけを頼りにしてキーを叩くタイピング技法。ブラインド・タッチ、タッチ・メソッドとも呼ばれる。
ピアノの「ブラインドタッチ」とは、曲を演奏する時に、弾いている手元の鍵盤を見ないで、楽譜を見ながら演奏することです。
では、どうして「ブラインドタッチ」ができていると、ピアノ演奏に有利なのでしょう?
その理由は大きく2つあります。
①初見力が身に付く
②曲の仕上がりが早くなる
では順番に説明していきましょう。
初見力が身に付く
「ブラインドタッチ」ができていれば、初めて弾く曲でも楽譜を読みながら同時に手も動かして弾いていくことになるので、新しい曲の練習をしながら、初見のトレーニングも同時進行で行っていることになります。
初見とは
楽譜を見て、試演せずに演奏することです。音楽学校の入試科目の「新曲視唱」「初見視唱」とは、このことを指しています。
ヤマハ認定グレードでも、初見は総合的な演奏力の重要な判断材料の一つとして、試験科目に含まれています。受験の時は、部屋に入って、譜面台に置かれている楽譜を手に取った後、数秒黙読をした後、演奏をします。
曲の難易度や長さはグレードによって異なりますが、8小節から12小節で構成されています。私は、ピアノ、エレクトーンの演奏、指導全てで最高位のグレードを取得しています。小学校4年生の時からグレード取得を開始して、最終グレードの取得は高校一年の夏でした。
初見の試験は、予め練習を重ねて準備をしている自由曲の演奏とは全く違って、どのような課題なのかは試験の瞬間までわからないため予想がつかず、毎回試験のたびに大変緊張したことを覚えています。
楽譜を読むことと弾くことが同時にできていると、練習をしている時にも余裕が生まれ、曲想を考えながら弾けるので、演奏に豊かな表情が生まれます。
曲の仕上がりが早くなる
「ブラインドタッチ」ができていない場合は
1 楽譜をドレミで読む
2 楽譜と手を交互に見て練習する
3 練習が進むうちに曲を覚えて、楽譜を見ずに手を見て弾くようになる
4 わからなくなったところだけ楽譜を見ようとする
5 一旦止まったり、テンポが遅れたり、ミスをする
♦︎2から5を弾けるようになるまで何度も繰り返す♦︎
一方、「ブラインドタッチ」ができていると、どうなるでしょう。
1 楽譜をドレミで読む
2楽譜を見ながら、指が曲の動きを覚えていくまで、ゆっくり何回も練習する
たったこれだけのシンプルなステップです。
一気に時間短縮ですね!
では、早速攻略法に入ります。
「ブラインドタッチ」ができるようになるためには、どんな練習をしたらよいのでしょう。
楽譜がスラスラと読めるようにする
できれば、音読をするときのように、淀みなく楽譜がドレミで読めるようになることが目標です。一朝一夕の練習では、そこに到達することはできません。語学の習得をイメージしていただくとわかりやすいですよ。
読譜に強くなるには近道はなく、ひたすら数をこなしていくことが一番効果があり、効率の良いトレーニング方法です。じっくりと時間をかけて、焦らずに取り組めば目が自然と楽譜を見ることに慣れてきて、法則が頭の中で理解できるようになるので、根気が必要になりますが、決して難しいことではありません。
大切なのは、すぐに音を出そうとしないで、弾く前に楽譜を読んで、まずどんな音なのかをイメージして、音の並び方やリズムを理解しておくことこそ弾く前の大切な準備と心得て、譜読みをおろそかに扱わない事です。
譜読みが完璧に仕上がってなく、いい加減なまま、早く弾いてみたい気持ちに任せて、すぐに音を出してしまう最大の弊害は、正確に弾けるようになるまでにたくさんのミスを重ねた結果、【何回も何回も練習中しているのになかなかうまく弾けないループ】に陥りやすいことです。
これは、ピアノ練習中に心が折れてしまう最大の原因を自ら作り出していることを意味します。(涙)
誰でもピアノを練習する時に辛い思いをしたくはないですよね?
生徒さん達がピアノを弾く時、辛い思いをしたり、将来困ることがわかり切っている道を進みそうになったら、それを避けて、より歩きやすい道順を示して導いていくことは、私のピアノ指導者としての生徒さんたちへの親心です。
最悪なのは安易に耳に頼ろうとしたり、記憶やカンに頼って弾こうとしてしまうことです。
これらは単に一時凌ぎでしかなく、きちんと理解して演奏していることにはなりません。その時はできているようなつもりになっていても、遅かれ早かれ、いずれいつかはこのままではいけないと自覚する時がやってきます。
「ブラインドタッチ」を意識した練習は、ピアノの基礎の土台作りの一環として、できるだけ早いうちから始めることで無理なく身につけることができますよ。
指先の感覚を鋭敏にする
「ブラインドタッチ」ができるようになるためには、ピアノを練習する時、ただ楽譜を読みながら漫然と音を出すのではなく、常に指がどのように動いていくのかを、よく感じていきながら、指先の感覚を鋭く研ぎ澄まることが、とても大切になります。
「この音を次に弾くためには、このくらい指を動かして、手の幅をこれくらい広げるんだ」
「次のこの和音を弾くためには、この指の形を作るんだ」
ということを、音を出す前に瞬間的に、明確に頭の中でイメージしていくことができるまで、何度も繰り返し練習します。
その時に気をつけることは決して止まらない、戻らないこと。
音楽は時間の芸術で常に前進しているので、止まったり戻ったりすることはないからです。
そのために大切なことがあります。
テンポを落として、できるだけゆっくりと練習する
正確な音を出すために、頭の中で考えて準備しなければいけないことは、ざっと挙げただけでも、これだけあります。
何の音か
どんなリズム(長さ)か
どの指で弾くか
どこの鍵盤か
どんな大きさか
前後の動きとのつながりは、どのようになっているか(隣、近い、遠い)
右手、左手の両手分ですから、この2倍です。これらを全て正確に理解して、さらに
頭で理解していること=身体、指が正確に動いてくれる
ようになって初めて「間違えずに弾けるようになった」状態になるわけです。
これだけたくさんのことを考えて準備して弾かなければ間違えてしまうのに、いきなり最初から速いテンポで練習したとしたら、頭も手も、演奏のスピードに追いついていくことは、到底不可能です。
早すぎるテンポで練習することは、例えると地図があるのにそれをよく見ないで、感覚を頼りに山道でバイクを走らせて、何度も木に激突したり、水溜りにはまって身体中びしょ濡れになりながら、疲労困憊になって目的地まで、さまよい続けるようなものす。
疲れる割には成果がなかなか実感できず、練習の効率が、とても悪いので、やがてピアノを弾くことそのものに嫌気が差してしまう危険もあります。やがてこんな声が頭の中にこだまするかも知れません。
もしかして私はピアノには向いていないの?
ピアノの才能がないのかしら?
いいえ、そんなことはありませんよ♡
以前にもお伝えしたことの繰り返しになりますが、やはり何と言ってもピアノ上達への早道はゆっくりと、なるべく間違いをしないように気をつけながら、何回も繰り返し練習をしていくことに尽きます。
ズバリ教えます!ピアノを効率よく上達させるために必要なたった一つのこと。
ゆっくりと地面を踏み締めるように歩きながら周りをよく見て進んでいくようなイメージです。
「ブラインドタッチ」の練習は、慣れていないと手元を見ないと間違えてしまうのではないかと不安になりがちです。
譜面を見なくてはいけないとわかりつつも手元の確認を優先してしまって、最初は練習すること自体に抵抗を感じてしまうかもしれませんが、大丈夫です、心配はいりません。
練習を重ねるうちに身体が感覚を覚えてきます。最初はミスもしますが、そのミスは弾けるようになるために必要な「良いミス」なので怖がることはありません。
案ずるより産むが易し。「ブラインドタッチ」をマスターした後は、ピアノを奏でる喜びをさらに深く実感できる新しい世界が待っていますよ!