こんにちは。
シンガポールの出張ピアノ教室 fairy wish creation
講師の 塚越 則子(つかごし のりこ)です。
Sちゃん(小学1年生)のレッスンの最後には必ずおうたを歌います。
当ピアノ教室では、幼児さん、小学校低学年の生徒さんのレッスンのとき、ご本人の意向や好み、その日の状況に応じて最後に
クールダウン
の時間を設けています。
これはシンガポールで30年以上ピアノ指導一筋で生きてきた、則子せんせーならではの独自の視点から
子どもたちの心に寄り添った工夫のひとつです。
クールダウンとは、そもそも激しい運動の後に、心身の機能などの興奮状態を静めることや、そのための軽い運動を指しますが
ピアノレッスンでは、たとえば
両手の動きが異なったりなど
おうちの人が気がつきにくい、普段の生活では経験したことのない、難しいことにも挑戦し、試行錯誤を繰り返すことが日常茶飯事であり
それに伴って、子どもたちの感情も複雑に揺れ動いていますので
レッスン終盤の数分間は、ゆったりとした気持ちで心の波を静める時間を確保しましょうというわけです。
一人一人の得意なことや、好きなことに落ち着いて取り組み、最高の気分でレッスンを終了して、ご家庭での練習への “やる気” につなげることがねらいです。
Sちゃんが、この日のおうたに選んだのは、童謡の
\赤とんぼ/
鍵盤がついている絵本を本棚から持ち出してきて、歌詞の部分を得意げに開いてくれました。
目にした途端、今日新しく弾いた課題の挿し絵とよく似た色使いなことにすぐ気がつきましたよ✨
Sちゃんのあたまの中では、2つの絵がピーンと結びついていたのでしょうね。
感受性豊かな子どもにはよくあることです。
早速、イントロを弾き始めました。
伴奏はそのときの気分に合わせて弾くので、毎回違うアレンジをします。もちろん即興でね😉
「え、則子せんせー、譜面がなくても、すぐ弾けちゃうんですか?」
と、おうちの方にビックリされてしまうことがよくあるのですが、逆に
え、先生をしていて弾けない方っているのですか???
と質問したくなってしまいます。なぜなら
この程度のシンプルな童謡すら楽譜が必要で、すぐにパッと弾けないレベルであれば、完全に
プロとしてアウトだから💦
一般的に認知されているのかは不明ですが、このあたりの知識は、ホンモノのピアノの先生を選ぶ基準のひとつですので、覚えておくといいですよ😃
「赤とんぼ」の2番の歌詞の「15でねえやは嫁にいき」の部分で、急に祖母のことが脳裏に思い浮かんできました。
私はずっと父方の祖母と同居していたのです。
明治の女性らしく、普段からいつも着物を着ていた祖母。
群馬の高崎出身です。幼い頃には疎開で北海道に預けられて苦労したそうですが、アイヌたちに、たいそう可愛がってもらったといいます。
手塩にかけて育てた自慢の長男(私の叔父にあたる人。心優しい青年だったといいます)は、18歳の時に海軍に召集され、その後2度と戻ってきませんでしたが、祖母自身は94歳まで長生きし、天寿を全うしました。
ちょうど90歳になろうかという頃、当時、町内一の長寿ということで、町内会の建物が完成した時の記念式典では、テープカットに「抜擢」されたりもしたんですよ。
名誉あるお話をいただいたあと、まだまだ「本番」には間があるにもかかわらず、真剣に着物や帯を選び始めた祖母の姿を目にして
「おばあちゃんって、もしかして出好きだったの???」
と、お腹を抱えて大爆笑したことを覚えています。
母とは嫁姑の関係でしたので、長い同居暮らしの中では、実にさまざまなことがありましたが
まだ介護施設の環境が、今のように充実していなかった時代に、寝たきりになっても、人様に面倒をかけず、家で協力しあいながら責任を持って看取ったことは私の心の中に揺るぎない自信として刻まれています。
母の大変さを日常的に間近で見ていたので、祖母がこの世を去り、様々な「憂い」から解放されて、さぞかし楽になったのだろうと、娘としても肩の荷がひとつ降りた気分でいたのですが
そんなある日、2人でスーパーに買い物に行くと、母が慣れた手つきでサッとあるものをカゴに入れたかと思うと、ハッとした表情をして品物をそそくさと棚に戻し
次の瞬間、その場にうずくまったまま泣き出してしまったエピソードは、今も忘れることができません。
手にしていたのは、祖母の病状が進み、食べ物が喉を通らなくなっても、最後まで口にすることができた、唯一の栄養源の「ミルクプリン」です。
欠かさずに冷蔵庫に買いおくのが習慣になっていたのですが、もう必要がなくなったことで祖母がいない生活を改めて実感し、寂しさが一気に込み上げてきたのでしょう。
親しい人や身内が、この世からいなくなるって、そういうものです。
新しい思い出を紡ぎ出すことが、もう2度と叶わない。
今ならその時の母の心のうちが痛いほどわかるけれど
人の感情って、そんなに単純なものではないのだなぁと漠然と悟った、若かりし頃の則子せんせーでした。
「赤とんぼ」を弾きながら、心は無意識のうちに空にいる祖母や母のもとに飛んでいたんだと思います。
「単純な童謡なのに、則子せんせーが弾くと、違う曲みたいに、すごく素敵に聞こえます✨」
Sちゃんのお母さんが、うっとりする表情でおっしゃってくださった一言は、私の心にもずっしりと重く響きました。
そう。
音に込めた想いって、まっすぐ伝わるものなんです。
どんな状況で、どんな曲を弾いているときも、自分の音に誠実でありたいと思います。
自分の発信する音は美しくありたい
そう思います。
◆おまけ◆
祖母と私。これでもかというくらい何枚も重ね着をして「雪だるま状態」ですね(笑)
食の細かった私は食べるのも遅くて、食事のときはしょっちゅう叱られていました。そんな時に、さりげなく助け舟を出してくれた祖母。
母が席を外したのを見計らって、ごはんに海苔を巻いて口元まで運んで食べさせてくれたりしたものです。懐かしいな….
続いての写真は、祖母を見送る3ヶ月ほど前の則子せんせー。
ヤマハ社内での新年イベントで演奏したときの一枚。
顔見知りが集結した内輪だけの会でしたので、みんなリラックスした表情です。
どこよりも手厚く、きめ細やかなピアノ指導で、シンガポールの駐在員日本人ご家族との信頼の絆を築いて32年。
頑張ることを楽しむ心を育てる
当ピアノ教室のレッスンは、ワンランク上の心と音楽を学ぶレッスンです。
ピアノを学ぶことを通して、これからの時代を生きるために必要な「人間力」を育てます。
当ピアノ教室は、300人以上の生徒さんたちを育て上げた経験を持つ、シンガポールで一番長い指導歴の日本人のピアノの先生が主宰している出張専門のピアノ教室です。
1992年来星。シンガポールPR(永住権)保有者。
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