こんにちは。
今日は音感についてお話しするシリーズの3回目、最終回まとめです。

 

 

第1回、第2回では「歌う電車」として鉄道ファンに親しまれている、京急電鉄のインバータ音を「絶対音感」「相対音感」双方から回答しました。

 

第1回目はこちら

 

第2回目はこちら

 

 

最終回の今日は、音楽業界に身を置き、小学生時代から40年以上ピアノ、エレクトーン、シンセサイザー、クラビノーバなど鍵盤楽器の演奏、指導を通じて音楽の仕事に携わってきた立場から、プロ、アマチュアの枠を超えて、実際の楽器演奏にとって本当に必要な音感とは何か、またその理由を説明します。

 

 

 

少し長くなりますが最後には、お勧めの書籍もご紹介しますね。

 

 

最初に第一回目のおさらいを少し。

 

 

ピアノレッスンでも、よく使う言葉
「音感」とは文字通り音に関する感覚、感度のことです。

 

 

♣︎長さに関するリズム感

♣︎和音やハーモニー(2つ以上の調和した響き)強弱に関するバランス感

♣︎色彩感。(実際に目で見るものではなく、その音の持つ性格。柔らかいとか明るい、力強い、等を音楽では音色(ねいろ)と表現します)

 

など上記以外にも「音感」には様々な種類があり、楽器演奏の上達のためには、これらを全てバランス良く総合的に高めていく必要があります。

 

 

健康な身体作りのためにバランス良く栄養を摂るのと一緒ですね。

 

 

一般的には「音感」=音の高低を聴き取る力、のイメージが強いでしょうか。

 

 

子供時代に音感教育のバランスを欠いてしまうと将来偏りを正すのに余計な負担がかかったり遠回りになってしまいます。

 

 

♣︎耳だけに頼る→感覚優位になり読譜力が遅れたり再現性(間違えを修正する力や毎回正確に弾く力)が育ちにくくなるため、のちのち補う必要がでてくる。

 

 

♣︎楽譜だけに頼る→ 記憶、運動優位になり、即興力に乏しくなる(楽譜に書いてあること以外での応用が効かなくなり、ジャズやポップスのCメロ譜*では演奏できない)ため、応用力を補う必要がでてくる。

 

 

*Cメロ譜とは、メロディ+コードで成り立つ楽譜で、伴奏部分の楽譜はなく、演奏者次第で内容は異なります。

 

 

音感を育む時は、お子さんの嗜好の違いへの配慮も必要ですね。1人1人の良さを充分に発揮できる場はみんなそれぞれ違います。

 

 

自由に好きなように伸び伸びしたい子
決められたことをきっちりとするのが心地よい子

 

 

一口に「バランス良く」といっても「音感の最適バランス」はお子さん1人1人によって千差万別なので、興味や得意分野に合わせて好奇心を引き出していく工夫をすることが音感を育てていく最初の下地作りになります。

 

 

絶対音感の絶対、とは音楽に必要不可欠な絶対的価値、という意味ではありません。

 

 

他を寄せ付けない、ずば抜けた圧倒的優位性を指すことではなく、比較する対象を必要としない、という意味です。

 

 

学力の評価方法の
絶対評価  相対評価 と同じです。

 

 

音感には

 

絶対音感   相対音感

 

 

と2種類あり

 

 

「相対音感」とは、音楽を聴いた時、ドレミで聴き分けることのできる能力です。

 

 

今回、京急電鉄のインバータ音を「絶対音感」「相対音感」を使って回答するシリーズを書くにあたり、読んで下さっている方がより理解しやすいようにと、音感に関する補足やエビデンスに適した内容を、かなり時間を割いて探しましたが、結局ネットの世界に、私の求めるコンテンツを見つけることはできませんでした。

 

 

本当に、この人には、そのように聴こえているのか?

 

 

心から確信できる記事だと手ごたえを感じる内容をネットの中に見つけることができないまま信頼できるのかどうか不確かな記事を、軽はずみに引用することはできません。

 

 

実際目に見えるものでも見え方や感じ方は違うし、目で確かめられるものでも、一瞬で溶けてしまう泡や、空にかかる虹のように儚い存在もあるのですから。

 

 

それでも私は敢えて、この捉え所のない、他の人とその感覚の共有が極めて困難な「耳で聴く領域」についての証明に自力でチャレンジすると決めました。

 

 

今回、このシリーズ①、②を読んで下さった生徒さんのお母様から、ピアノレッスンに伺った際、内容について「そうだったんですね、目からウロコでした!」とのご感想を頂戴しました。

 

 

その際、あるエピソードを教えて下さったのですが、その話は、数年前に耳にした内容と偶然にも同じ。

 

 

当時旬の女優さんが「絶対音感があるから、生活音全てをドレミで聴きとることができる」と話していたのを聞き、そういうものだと思い込んでいたのだそうです。

 

 

◉音大ピアノ科卒
◉テレビで放映

 

 

そんな世界の存在を信じている人はきっと他にもいるはずですよね?

 

ファンタジーであれば夢があって楽しいけれど、ピアノ指導者として、お子さんたちの教育に携わる立場としては笑って聞き流す訳にはいきません。

 

 

実際の音楽業界の現場で絶対音感の有無は音楽性とは関係ないため、音楽的実力の判断材料ではありません。

 

 

私は絶対音感がありますが、仕事の場において演奏の場でも指導の場でも、ピアノのピッチを確認したり、他の楽器とのチューニングの際には重宝しますが、絶対音感があることをセールスポイントとして使う必要性を今まで感じたことはありません。

 

プロフィール

 

 

 

 

ただ同じ業界の人同士だと、ふとした仕草や言葉から推察されて、あ、そうなんだね(笑)というのはあります。

 

 

ピッチのズレたシンガーの歌は無意識に眉をしかめていたり、耐えられずに席を外したくなります。目眩がするので。。。
また、音楽を流しながら何かに集中することができません。

 

 

相対音感は絶対音感ではありません

 

 

音楽を聞いて、そのメロディをドレミの音として認識して聞き分けたり、和音の種類(ポピュラーではコードといいます。)が理解できる音感を「相対音感」といいます。

 

 

 

昔、ヤマハ音楽教室の幼児科さんのCMで、先生が弾いた和音を生徒さんが聴いて「ドミソ」「ドファラ」「シレソ」と答えるシリーズがありましたが、あれは音をコード(和音)で聴いた時、かたまりで感じ取って聞き分ける「相対音感」を養うトレーニングの一つです。

 

 

ヤマハ認定グレードでも試験では演奏と併せて総合的な音楽力を求められます。

(私はピアノ、エレクトーン、指導全て3級のグレード最高位「トリプル3」です。)

 

 

 

指導者のプロや演奏家の中に「私、絶対音感はないよ」と言う人はたくさんいます。

 

 

実際の現場で必要とされるのは、鋭敏な相対音感初見力(初めて見た楽譜を間違えず正確に弾く)や移調力(その場ですぐに譜面に書いてある調を移調して弾く)や、センスの良いアレンジ力です。

 

 

 

意外に聞こえるかもしれませんが、絶対音感はプロの音楽家にとって必要不可欠な条件ではないため、持っていないことは別にハンデでもなく恥ずかしいことでもありませんので隠す人はいませんよ。私達プロが求められていることはそこではないと、みんなしっかり認識していて一切のブレがないからです。

 

 

 

絶対音感がある、なしは、音楽家としての優位性とは全く関係なく、例えるならば

 

 

小説家の仕事をしていて、業界外の人へ、小説家としての実力や成果を証明する必要があるとき

 

「私は漢字検定一級です」「私は書道初段です」

 

と話すような感じです。少々的外れな主張に聞こえませんか?

 

 

ピアノの調律師さんも、デジタルチューナーと自分の耳を併用して精度を高めたチューニングをしていますね。

 

 

ピアノの調律師さんは音の高低だけを整えるのではなく、幅広くバランスのとれた技術を求められる、「ピアノ整備士さん」ですから耳だけでは務まらず総合的なピアノのメンテナンスや修理のスキルを専門的に学校で学び、習得しなければ当然資格を得ることはできません。

 

 

 

当ピアノ教室でご紹介しているピアノチューナーは、シンガポールヤマハのトップチューナーでライセンスがあり、ヤマハ浜松本社での研修経験も持つ信頼できるチューナーです。

 

楽器のご用意について

 

 

音感は磨きをかけて研ぎ澄ましていくもの

 

 

イメージとして
add onではなくrefine

 

 

私にとって音感とは、身につけて加えていくのではなく精製して、取り除き、洗練されていくイメージがしっくりきます。

 

 

音だけを取り出すと、抽象的で難しく思われがちなのですが、味覚を研ぎ澄ましていくのと同じです。五感を磨く、という言葉の通りですね。

 

 

最相 葉月さんの「絶対音感」をお勧めします。

 

 

本当に「聴こえる」人たちの声が詰まっていて、そうそう、そうだよ!とうなずきながら感動に包まれて一気に読みました。

 

 

絶対音感

 

 

レビューが50件以上。その内容をじっくりと読むだけでも価値があります。