こんにちは。
シンガポールの出張ピアノ教室
fairy wish creation 講師の
塚越 則子(つかごし のりこ)です。
今日の内容は、昨日からの続きです。
昨日の投稿はこちら。
では早速本題に入りましょう。
JASRAC VS 音楽教室。この裁判では、音楽教室の先生が「聴かせることを目的」に演奏を行っているか否かについてが争点の一つとなっていることでも、大きな注目を集めています。
愛弟子の正体はスパイだった!
2019年、JASRACが指導の実態を確かめるため、音楽教室に【覆面調査員】を派遣していたことが明らかになり、業界内に衝撃が走りました。
報道によると、JASRACの職員は職業を「主婦」と偽り、ヤマハの教室に約2年間通って潜入調査を行っていたといいます。
レッスンでの講師演奏にも著作権支払いの義務があることを証明するのが目的だったと思われます。
とは言っても、こんなことが現実にあるなんて、にわかには信じがたいことです。
レッスンでの講師の演奏について、この調査員は
「とても豪華で、まるで演奏会にいるような雰囲気」
といった趣旨の証言を行ったとされています。
当時、このような【スパイ活動】を思わせるやり方が報じられると、ネットでは非難の嵐が巻き起こりましたが、JASRAC側は
《通信カラオケが普及する以前は、カラオケスナックなどに「カラオケGメン」などと呼ばれる覆面調査員を派遣していた》
という主旨の説明をしています。JASRAC にとってみれば、これも、日常の調査の一環ということなのでしょう。
この調査方法の是非が、今回の裁判では一切問われないという事実もショックです。
上手になりたい一心で真剣にレッスンを受けていると信じて疑わない愛弟子の1人が、2年間にもわたって自分のことを騙し続けていた。。。この受け入れがたい事実。私がもしこの先生だったら、、、と考えると、恐ろしさのあまり震えが止まりません。
音楽講師が全力を尽くして、目の、前の生徒のために最高の演奏を披露しようとするのは、教育者として当然の、あるべき姿です。
というよりも、どんな分野であれ、他人に何かを教える人間が、全身全霊でその任に力を尽くすのはあたりまえの行為なのではないでしょうか。それが「教育」「指導」というものだと私は信じています。
また、生徒さんたちが「全身を耳にして模範演奏を聞く」態度も、同じく、音楽を学ぼうとする人間として至極当然な姿勢です。
そもそも教える側が、真剣さを欠いてぞんざいな演奏をしていたり、学ぼうとする側が、遊び半分の、いい加減な態度で聴いているようでは演奏技術はもとより、「音楽のチカラの本質」そのものが伝わらない。
おそらくJASRAC は、「教育目的で音楽が演奏されている」場所に、著作権使用料が発生していない現状が不満で訴訟を起こしたのでしょう。JASRAC にしてみれば
「教育目的、レッスン目的であれ、一定数の聴衆が音楽を聴き、その人々に向けて、楽曲が演奏されている事実は変わらない。
だとすれば、教育という、いわば【隠れみの】の裏で、やりとりされている音楽に対しても、われわれは著作権の支払いを要求する」
といったところなのでしょう。
しかし、そもそも、生徒さんたちは、レッスン用の楽曲を演奏するために、楽譜を購入しています。
その楽譜の出版にあたっては、すでに著作権使用料が支払われている。
さらに生徒さんたちは、必要に応じてプロの演奏家が録音した楽曲のファイルなりCDなりを購入することだってある。
これらの音源についても、当然のことながら著作権使用料がのせられているのに,,,,,,
さらに教室内での講師の演奏についても、別途レッスン料の中からJASRAC に著作権料を支払わなければ違法となるのでしょうか???
この論争で私がなによりも残念に思うことは、音楽教室に潜入捜査員を送り込んで訴訟のための資料を収集しようとしたJASRAC の取り組み方、そのものに対してです。
JASRAC は、人が人に音楽を教えている現場にスパイを送り込んだ
目的はどうであれ、その事実は変わりません。それは、人が人から何かを真剣に学び取ろうとしている神聖なる場所に、悪意を持った観察者を紛れ込ませたということを意味します。
これはとても罪深いことなのではないでしょうか。
どんな有名な音楽家だって最初はレッスンで他のアーティストの曲をコピーしたり練習に使った経験が必ずあるはずです。
本来、音楽とは人づたえに引き継がれていく言葉を超えたコミニュケーションであり、人と人の思いを結んでいく温かくやさしい存在なのに、JASRACはその根底を根こそぎ破壊しようとしているとさえ感じてしまうのは私だけでしょうか。
世界に目を向けてみると、アーティスト・ユーザー・管理団体が、win-win-winの関係であるのに対し、日本では管理団体が1人勝ちのような状況であることは、実は国内では一般的にあまり知られていない事実です。
子ども達の健全な育成、文化の発展や、若きアーチストたちの育成のためには、現状の不均衡な状態を改善することが急務です。
そして、その実現のためには、音楽を愛する一人一人の方々が、この問題を自分の問題としてとらえ、考えることから始まるのではないでしようか。
JASRAC は、使用料を徴収することに躍起になるだけでなく、本来受け取るべき正当な配当を権利者にきちんと分配し、アーティストが育つ豊かな土壌を作ることに力を注ぐことも大事な仕事と心得るべきだと私は主張します。
最後に。
音楽教室に自分の身を偽り、2年間通い続けた女性スパイ氏は、一体何を守ろうと、あるいは獲得しようとして「師弟関係」の”信”と”義”を裏切ったのでしょうか。
また、それを業務命令として指示したJASRAC は、一体誰と、何と必死に戦っているのでしょうか。
さて、2日にわたってお伝えしてまいりましたJASRAC 訴訟問題。皆さんは、どのようなご感想をお持ちになりましたか?
今回、このような形で問題を提起しましたが、ピアノを愛する多くの人々や子どもたちにとって、快適で実りある音楽環境を守り抜こうと、私たち指導者が、立場の違いや専門楽器の垣根を超えて一致団結し、一様に声をあげ、行動を起こしている事実を知っていただき、心の中でエールを送っていただけたら嬉しい限りです。
張ることを楽しむ心を育てる
当ピアノ教室のレッスンは、新時代にふさわしい、ワンランク上の心と音楽を学ぶレッスンです。
ピアノを学ぶことを通して、これからの時代を生きるために必要な「人間力」を育てます。
当ピアノ教室は、シンガポールで最も長い指導歴を持つ日本人のピアノの先生が主宰している出張専門のピアノ教室です。
1992年来星。シンガポールPR(永住権)保有者。